
完全競走下での余剰利潤はゼロになる。ミクロ経済の基本です。
完全競走はみんな同じ顔。「違いを作っても直ぐに真似をされる」ため、長期利益を作ることが難しく、コンサルは最近の技術を直ぐに持ってくる。
本誌では「戦略論」「経営論」「経営対談」の3部構成で、長期利益をどう作るかなど戦略ストーリーが書いています。
【戦略論】
・全ては経営者次第
昔は外部環境がよく事業も追い風だった、そこから事業立地の良い会社が先行できた。そこでポジショニングでの独自性が出た。今は「戦略ストーリー」を作り、一貫性・好循環を生み出すこと。目先の小さな損得だけで考えてはいけない。
・日陰戦略は「逆張り」ではない。単純に事業機会の逆をいくだけなら、日陰どころか「真っ暗闇」。あえて熱していない言葉を使えば「裏張り」だ。成熟した競走市場にあって、目先のキラキラした事業機会を追いかけるのではなく、商機の裏側にある勝機をねらうこと。
・イノベーションとは新しいことをするのではなく、非連続的な変化をいう。現在からの連続的な変化は「進歩」という。イノベーションは世の中や人々の生活が大きく変わることであり,供給よりも需要に深く関わっているからだ。スマートグラスは非連続だが需要に関わらなかった(指でさわれない不便が勝った)が、ウォークマンは録画もできず音質も悪く退化しているように思うが、新しい需要を産んだ。
・アイリスオーヤマは自社製品と卸しを両方やっている。新しいニーズをとらえた製品を次々に市場化するには自社工場は持たず、生産を外注するファブレスメーカーの方が合理的なのだが、整備の稼働を7割に抑えてわざと生産能力に余裕を持たせ、ニーズが高まったコロナ禍で問題となったマスクを大量生産したり、LED電球に大規模な投資をするなど独自のKPIを持っている。工場は9つに分散し、顧客に直ぐに届けることを重視。効率よりも非効率をすることで市場に勝つ戦略をとっている。アイリスは「選択と分散」という戦略を取る。ユーザーインの生活提案型価値創造。
・企業はもともとパーパスがあるから生まれている。最初に必ずパーパスがある。そして希薄化する。企業組織は目的と手段の連鎖で出来ている。上司の手段が部下の目的となる。「手段を目的としたシステム」が企業となることが多い。それを正すのが経営者の役目。
・ワークマンはPBを長期戦略と捉え一つの商品を5年売る。長いものは10年と決めて長い目線で商品を徹底して作る。シーズンでの売り残しは考えない、一度出した商品は値引きしない。大口取引はしない。個人相手なので大口に影響されることはない。フランチャイズはシーズンものがなく常に同じものを売るので運営も楽。毎月の売り上げも安定している。
・PDS戦略が重要
plan do see。ホテルにしろレストランにしろ「気がイイ空間の提供」にあり、立地でもなく、メニュー、料理、接客、デザインではなく、空間全体の良さを売る。
尖った差別化はなく、万事が普通。要素レベルのマキシマイズ(極大化)ではなくオプティマイズ(最適化)されること。なので、あるメニューが売れ出しても、そこに絞らない。意図的に差別化しないことがいい感じを演出する。
直ぐに役に立つものほど、直ぐに役に立たなくなる。ヒット商品を作るのではなく、長く利用されることを意識する。パッケージ化せず、価値観やライフスタイルに合わせる。
誰に好かれるか、よりも、誰に嫌われるか。流行りに流されず自分自身のセンスを大切にする。刹那的でなくパーソナルな満足を求めていく。究極は何が良いかの具体が説明できない場所くらい自然な空間であること。
・O企業とQ企業
O企業とはオポチュニティ、機械を捉えて事業を成功させる企業。ソフトバンクのようにYahooや携帯電話など、新しい商売の機会をとらえて一気に売り上げを伸ばす。O企業は動きが早く、儲ける時に一気に動き、直ぐに撤退して次を始める。
Q企業はクオリティ企業。事業をしっかり固め戦略を持って事業を成功させる。
コレはどちらが良いかということではない。
・DeNAについて
O企業で、ビッダーズからMobage、怪盗ロワイヤルと次々に事業主体が変わる。問題はキュレーションメディアのWELQ。
O企業の生命線はトップラインの成長にある。質と量はトレードオフの関係だ。キュレーションメディアは競争戦略では不全だ。
MERYにしても運用者の問題があるのでは?企業専門家は事業に関与しない長期利益も考えない。
・戦略ストーリーは独立自尊であること。目先の売り上げを求めて強者に安易に乗ろうとしない。自分自身で価値を作る。
・オリンピックはゼロサムゲーム。商売はプラスサム。平和な世界。一つの業界に二つの強者がいる。
・どう売れたかより、なぜ売れたかを考える
・顧客を惹きつけるライフカルチャーを発生して、何十年もかけてコミュニティを作ったフェンダーのようなことを短期間で作ったのはクラシコム「北欧、暮らしの道具店」
・くまモンはロイヤリティフリー(利用料無料)とし、熊本県活性化のために熊本色を全て排除。新幹線開通で集客が見込める大阪を狙って、まずは大阪で人気者になるようにプロモーションを開始。熊本を知ることで熊本に人が集まる。テレビCMや食品メーカーとのタイアップで熊本県の認知度を高めた。
・戦略ストーリーはアクションプランではない。やることを決めてもそれらがどうつながって、どう儲かるのかがわからないから
・戦略ストーリーはテンプレートではない。ブルーオーシャン戦略をやるとマス目を取る戦略でストーリーとしてつながっていかない
・戦略ストーリーはシミュレーションではない。数字遊びでストーリーになっていない。
・星野リゾートの星野佳路さんは、海外の人に「おもてなし」を説明する時、そもそもゲストとホストが同じレベルに立っている。上下関係がない。しかもサーブ権はつねにホストが持っている。茶の湯の文化がそうであるように、まずホスト側が自分の世界観を構築して、それをお客様に提示する。お客様は滞在中、四の五の言わずに、その世界観に身を浸して楽しむ。それが「おもてなし」で西洋のバトラーが行う親切な対応、丁寧、迅速、キメが細かい主従関係のあるサービスとは異なる。
・星野さんはいつも「違い」を考える。二流経営者はベターを考える。
・かけ声をかけるのは、二流経営者のやること。
【経営論】
・変化を追うことで、初めて不変の本質が浮き彫りになる。(変化の逆説である)
・遠近歪曲は日本だけでなく世界も同じ、遠いものがよく見えて近いものはよく見えない。日本はイノベーションがない、GAFAが生まれないというが、アメリカのAdobeの調査では世界一クリエイティブな国は日本と評され、世界一治安が良い、製品の品質が高い、清潔で秩序だった国と高い評価を受ける。遠近歪曲は世界も同じ。シリコンバレー礼賛もそうだ。ダメな企業もいっぱいある。アメリカ四季報の最初のページに「ドーバー」「フローサーブ」「ザイレム」「スナップオン」と出てくるが、工業製品メーカー、制御器、浄水システム、業務用工具メーカーと知らない会社ばかり。GAFAのようなアメリカ的経営とは違う。国は関係ない。
・株主のために働くというが、自分が自社株を持ち会社の収益を上げれば給与も上がり株の価値も上がる。昔からの不変の法則だ。
・CSR(企業の社会的責任)からSDGsになり、今はESG。結局はトレンドワード。風紀委員が社会的圧力をかけているだけ。
・経営には論理という不変なものを持つ必要がある。かつ、抽象度の高い論理を持って、具体と抽象を行き来する。
・松下幸之助 言葉の力
「自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。どんな道かは知らないが、他の人には歩めない。自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道」「それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道が開けてくる。深い喜びも生まれてくる」「素直に生きる」「本領を生かす」「日々是新」「視野を広く」
・小林一三 天才的興行師
楽しさ、快適さ、健全さ。モノよりコトを追求し、人間生活の意味にこだわった。多売を獲得できれば薄利でも良いという考え方。大衆が払えるお金で映画・演劇の興行を成立させた。
本田宗一郎「私は儲けたい、幸福になりたい、女房に内緒で遊びたいという普通の男です。ただ、もし企業家として他人と違うとしたら、人に好かれたいという感情が強いということでしょうね」藤沢「経営はアートであり、演出の基本は意外性にある」「金儲けなら本田より上」
・出井伸之 四半世紀先を見たビジョナリー
ハードウェアでネットワークをつなぎ、自社のコンテンツ資産をフル活用する「デジタル・ドリーム・キッズ」を打ち出した。出井がいなければ今のソニーはなかった。
日本で最初に執行役員をつくり、ガバナンスの改革に手を突っ込んだ。
・柳井正 全身商売人
「服の商売なら、ひょっとしたら世界一になれる。確率は0.1%以下かもしれない。しかし、ゼロではない」服を変え、常識を変え、世界を変える。
【戦略対談】
・ローソンはチェーンオペレーションなので「上が何を決めるのか」待っている状態。サントリーは現場の裁量でドンドン決めていく、報連相もあまりない。
・200年続くビーム社を買収し、ビーム社の先端のSNSを活用したり、テクノロジーを導入したり、採算管理をとても細かくしていた。現場は社長が行くと喜んでいた。本社とカルチャーが異なり良いものを作る意識が強い。ジムビームはそうやって作られる。現場をミックスすることを行なった。
オープンハウス社長荒井正昭
・気合いと根性の大京と頭のいい集団のリクルートコスモスが倒産の危機となり、相場価格に変動するリスクである資産を買うディベロッパーではなく、仲介業で勝負すると決めた。僕より上の世代はディベロッパーでバブルで儲けたが、バブルが弾けたら倒産した。相場の恐ろしさを知った。センチュリー21の看板で仲介を開始、トップ成績の会社の社長と話すと、売上のためだけに働いているので、コレは勝てると思った。
仲介で会社が成功して大きくなった。僕は人を羨ましがる性格なので、もっと会社を大きくしたいと思った。その時、仲介だけでアフターサービスをしないのはお客様に認められない。お客様に認められる会社こそ会社も成長できる。「お客様のために働くこと」を選択した。売るだけの仲介会社から家を建て始めた。実需2-3割、仲介7-8割から開始。センチュリー21の世界大会でアメリカ西海岸に行ってましたが、アメリカの営業年収5000万円、オーナーは2億円とバフっていた。2007年のサブプライムローンで危ないと思い一気に資産を売った。2008年4月あたりから日本のディベロッパーは倒産した。そこから土地を買うときは戦略的になり、裏に墓がある、接道が狭い、線路沿いなど入札が低いものを買うようにした。新卒から用地担当をさせて人を育てることを徹底した。他社は経験者採用。人を育てる仕組みを作った。できる営業はずるいこともできるし頭も回るので独立してしまう。しかも営業のみの経験。「悪いことをしそうだが売り上げを上げる」モチベーションはお金だけ。定着率が悪いので中小企業ばかりふえる。
辞めない組織としてやるべきは、新卒だけを採用し、事業内容に理解のある人だけを採用。数字は出さないが、言うことを聞き、頭を使わない人も採用する。売れる人と愚直な人の採用のバランスが大切。
新卒に用地開拓の営業をさせる、飛び込み営業を1日20件する。新卒はそれを当たり前のようにやる。おじさんができないことを若手にやる。新卒は1日20件を当たり前と思ってやるから。
今は9割が自社開発の実需一軒家を販売。ユニクロ戦略で質の良いものを安く売る。自社開発なので質が良く、仕入れも安いので安く売れる。他者がやらないことをやる。
不動産営業は若ければ若いほど良い。街を歩いている人に声をかけて売る。それが3割。爽やかな若い子に声をかけられる方が絶対に良い。能書を垂れるのではなく、素直で腰が引くのが良い。頭の良い人は慇懃無礼な人が多い。人は上に立ちたいから「へりくだっている人」を好きになる。官僚は頭が良いけど国民から怒られますよね。冷たいからなんです。「おバカっぽい」のがよい。
不動産は景気が悪くなると構造的にメスを入れられる。派手に飲むと道を踏み外す。
日本駐車場開発 巽一久社長
・巽さんの戦略ストーリーには「飛び道具」が一切ない。ビル・ホテル・デパートの建設済みの駐車場をビジネスとする。
立体駐車場でビルに月極で貸す、昼間空いているときはビジネスマンに時間貸し、夜空いていれば繁華街の客に貸す、対人サービスが上手くなれば三毛作、四毛作が可能。
スターマイカー 水永政志社長
・ファミリータイプのマンションを安く購入し、入居者が出たら中古市場に高く売る。1000戸を超えると予測の精度が上がる。
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